2023-10-13
Loglass編集部
約5分
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資金繰り表をエクセルで作成する方法や活用方法を解説!

経営者の手元にはさまざまな経営ツールが存在しますが、その中でも強く影響力を持つものの1つが「資金繰り表」です。資金繰り表は、経営リスクを早期に察知して対策を立てたり、金融機関との融資の交渉を有利に進めたりするうえで有効です。

しかし、「煩雑でどこから始めれば良いかわからない」などの悩みから、実際に活用している経営者は実はそう多くないようです。

本記事では、経営に重要な資金繰り表の概要やエクセルでの作成法、活用法について解説します。会社の財務状況をより正確に把握し、質の高い経営判断を下したい方はぜひご参考にしてください。

経営管理クラウド「Loglass」は、アナログ運用の多い、経営管理領域のデータを一元化。予算策定、予実管理、見込更新、管理会計のフローを効率的に仕組み化し柔軟に“次の一手“を打ち出せる機動力を届けます。

資金繰り表とは?

資金繰り表は、企業の資金の流れを追跡するための財務報告書です。損益計算書が収益と費用を記録するのに対し、資金繰り表は資金の動きを具体的に示しています。

資金繰り表は、企業の財務状況を確認するために使用されます。資金繰り表を活用すれば経営状況の理解や予測ができ、倒産リスクなどを早期発見するのに役立てることができます。

資金繰り表の種類

資金繰り表には、以下2つの種類が存在します。

  • 資金繰り実績表
  • 資金繰り予定表

正しく資金繰り表を作成するうえでは、それぞれの違いについて押えておきましょう。

資金繰り実績表

「資金繰り実績表」は、過去の資金の動きを基に作られます。仕訳データから現金や預金の取引額を抽出したり、現金出納帳や預金出納帳、総勘定元帳から金額を転記したりする方法が一般的です。

資金繰り実績表を作成する際の重要な要素として、会計期間の設定があります。期間(区切り)によって、資金繰り表の名称も変わります。

たとえば、1年間の期間(区切り)で作成されるものは「年次資金繰り表」。1ヶ月間の期間(区切り)で作成されるものは「月次資金繰り表」。1日の期間(区切り)で作成されるものは「日次資金繰り表」と呼ばれます。

資金繰り予定表

「資金繰り予定表」は、過去の実績や月次の経営計画などを基に数値を予測し、作成される資金繰り表です。売掛金、買掛金、その他将来必要となる資金、入金予定などを数ヶ月から1年先まで予測し、一覧表にまとめます。

資金繰り予定表を作成することで、資金の流れを先読みすることが可能となります。資金繰り実績表と比較することで、企業の経営状況が健全に進行しているか、または危機的な状況になっていないかを判断することが容易になります。

資金繰り表をエクセルで作成・管理する方法

資金繰り表を効率的に作成・管理するうえでは、エクセルの活用がおすすめです。以下の手順で作成・管理するとよいでしょう。

  1. 必要なデータを準備する
  2. 表を用意し、管理する

それぞれの詳細について解説します。

⒈必要なデータを準備する

資金繰り表の作成には、企業の経営状態を予測するための適切な資料が必要となります。具体的には、以下の各種資料を用意しましょう。

要素 意味 必要な資料
①期首の資金残高 期間の始まりにどれだけのお金があったか 現金出納帳、預金通帳(入出金明細表)
②入金 どれだけのお金が入ってきたか(売上など) 受注や売上の管理台帳、手形帳
③出金 どれだけのお金が出ていったか(経費など) 月次試算表、借入金返済予定表

各資料の簡単な説明は、以下のとおりです。

  • 現金出納帳:現金の出入りを記録する帳簿
  • 預金通帳(入出金明細表):銀行預金の出入りを記録する帳簿
  • 受注や売上の管理台帳:売上の詳細を記録する帳簿
  • 手形帳:売上債権(お客様からの未払い金)の詳細を記録する帳簿
  • 月次試算表:毎月の収入と支出の詳細を記録する帳簿
  • 借入金返済予定表:返済予定の借入金の詳細を記録する表

これらの資料を用いることで資金繰り表を作成でき、企業のお金の流れを詳しく把握できます。

⒉表を用意し、管理する

必要なデータの準備ができたら、以下2つの方法で資金繰り表を用意しましょう。

  • テンプレートを利用する
  • 自分で資金繰り表を作成する

具体的な方法について解説します。

テンプレートを利用する

資金繰り表の作成は、法的に必須とされているわけではなく、企業が自己判断で行うものです。また、その形式は自由に設定することが可能です。

クラウドベースの会計ソフトウェアを使用している企業の場合、そのソフトウェアには資金繰り表を作成するためのテンプレートが含まれている可能性があります。そのため、一度ソフトウェアの機能を再確認してみることを推奨します。

それに対して、会計ソフトウェアを使用していない企業は、資金繰り表の無料テンプレートを活用しましょう。

たとえば、日本政策金融公庫では以下のフォーマットが配布されています。

出展:各種書式ダウンロード(資金繰り表)|日本政策金融公庫

こちらは国民生活事業に関わるサービスを受ける際に使用されるフォーマットですが、自身で資金繰りを管理する際にも活用可能です。

そのほか、「京都銀行」などにおいても、同様のテンプレートを無料で提供しています。自社のニーズに最も適したものをダウンロードし、資金繰り表として活用してみてください。

参考:資金繰り表・経営(事業)計画書ダウンロード|京都銀行

自分で資金繰り表を作成する

カスタマイズ性を高めたい場合、自身で資金繰り表を作成するのも1つの手段です。

資金繰り表を作るというのは、基本的には「お金の動き」を追跡することです。エクセルを使って、2つの主要な方法でこれを行えます。

「資金繰り表」の作成は、エクセルを使用して行われ、その過程では主に2つのアプローチが存在します。

  • 現金出納帳や預金出納帳を使って、直接に金銭の移動を追跡する
  • 会計ソフトウェアからの「残高試算表」などを利用して、重要な数値を取り出して作成する

現金出納帳と預金出納帳を基にした表の作成手順を説明します。以下の段階を踏んで、先ずは最新の「資金繰り実績表」を作りましょう。

  1. 先月までの残金のトータルを算出する
  2. 営業活動から得た利益を、項目別にまとめて記録し、全体の売上収入を求める
  3. 営業活動による支出を、項目別にまとめて記録し、全体の支出を求める
  4. その月の収入と支出を差し引きし、収支を算出する
  5. 営業外の金銭の動き(例:銀行融資や返済など)を記入し、財務収支を計算する
  6. 当月の損益(当月収支)を算出する
  7. 先月の繰越残高と当月収支を加算し、次月への繰越残高を計算する
  8. 次月以降も1~7の作業を繰り返す

上記のステップを終えたら、作成した「資金繰り実績表」を基礎として、将来の金銭の流れを見込む「予測資金繰り表」を作ります。

過去のデータと同じパターンの金銭の流れはそのままに、売上の変化やそれによって変わる費用(経費)などを反映させます。借入金の返済などは返済予定表を参考に入力します。

現金出納帳や預金出納帳のデータから資金繰り表を作るのは少し時間がかかるかもしれません。しかし、エクセルやスプレッドシートの関数を上手に活用すれば、スピーディーに作業ができます。

資金繰り表の効果的な活用方法3選

資金繰り表はただ管理するだけでは、経営に有利に活かすことはできません。表を活用する際には、以下3つの目的に基づいて利用することをおすすめします。

  1. 財務管理を計画的におこない、金融資源の動向を明らかにする
  2. 黒字倒産を予防する
  3. 銀行融資を有利に進める

ここからは、資金繰り表を効果的に活用する方法について解説します。

⒈財務管理を計画的におこない、金融資源の動向を明らかにする

経営者の中には、損益計算書を使って経営状況を確認する人が多いです。しかし、損益計算書ではキャッシュフローの具体的な状況がうまく反映されないため、資金の実際の動きを把握するのは困難となるはずです。

以下の例を考えてみましょう。

  • 掛取引で、収益が発生するのは1ヶ月後
  • 収益は増加しているが、在庫も多くなっている
  • 収益額よりも返済額のほうが多い

上記のような状況は、損益計算書だけでは把握できません。ここで必要なのが、資金繰り表です。資金繰り表があれば、経営者は資金の動きを現状に合わせて明確に視覚化・理解することが可能になります。

重要な視点 損益計算書による把握 資金繰り表による把握
掛け売り後の収益 難しい 可能
在庫増加と収益 難しい 可能
返済額と収益 難しい 可能

⒉黒字倒産を予防する

「黒字倒産」とは、損益計算書では収益が見られるものの、資金が足りなくなってしまう現象を指します。

損益計算書は、売上が生じたタイミングで、それに基づく収入を記録します。しかし、実際には、企業間の取引は多くが「掛取引」で行われます。このため、売上が生じたときにはまだ資金の受け取りがないという状況が一般的です。

取引相手が支払いを遅らせたり、支払い不能に陥ったりすると、会計上は黒字であっても資金的には困難に陥る可能性があります。

資金繰り表を作成すれば、未回収の売掛金や見込まれる金額、およびその予想される回収期間を把握するのが容易になります。「売掛金を回収する前に資金が底をつく」などの予測が立てられ、黒字倒産を防ぐための対策が容易になります。

概念 損益計算書 資金繰り表
収入の計上 売上発生時 入金時
掛取引の扱い 見えない 見える
支払遅延の影響 見えない 見える
資金難の予防 困難 可能

⒊銀行融資を有利に進める

金融機関は、企業への融資を考慮する際に、精緻な資金繰り表を高く評価します。前に述べたように、事業の実際の状況は損益計算書だけでは評価できません。そのため、融資の是非を判断する一つの指標として資金繰り表が重要となるのです。

もし自社で資金繰り表を作っていない場合、金融機関の担当者が作成します。しかし、どれほど詳しくヒアリングを受けたとしても、社外の人物が作成するものには不明瞭な部分や理解し難い箇所が出てくる可能性があります。そこで、初めから資金繰り表を自社で整備しておくと、それが企業にとっては大きな利点となるでしょう。

さらに、資金繰り表を整備し会計管理を行っている企業は、安定した運営と誠実な経営を行っているという印象を与えます。これは金融機関に対して良いイメージを与え、融資の審査に有利になる可能性があります。

活用方法 メリット
自社で資金繰り表を作成 社内の実情を反映した正確な情報提供
自社で資金繰り表を整備・会計管理を実施 堅実な経営の印象を与え、融資審査に有利

まとめ

適切な資金繰り表の作成は、経営の現状把握やリスクを低減するための重要な手段です。これは、金融機関からの評価を高める効果も持っています。無償で利用可能なテンプレートやエクセルを活用して、適切な表を作ることを推奨します。

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執筆者
Loglass編集部

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