「毎期作成する予実管理表に手間がかかりすぎる」「そもそも予実管理の目的がよくわからない」といった悩みや疑問を抱える企業の方は少なくありません。
この記事では、経営の目標達成状況を分析するツールである「予実管理」の手間を効率化する方法をご紹介します。予実管理の必要性から、Excelを使った予実管理表の作り方、そして時短のコツまで解説します。この記事を参考にすることで、日々の予実管理が楽になるはずです。
予算管理(予実管理)とは、予算と実績の差異を管理することです。
「予算」は予想される収益や費用、目標などを意味し、「実績」は実際に起こった収益や費用、進捗状況などを意味する言葉です。
あらかじめ設定された予算と実際の成果とを比較・管理することで、事業の進捗状況や目標達成度を評価します。そして、事業の課題や改善策を見つけ、目標の達成度を高めます。
経営では、計画通りに事業が進んでいるかを確認・管理することが非常に大切であり、それを行うのが予実管理です。そのため、法的には義務づけられていないものの、 予実管理は企業において重要です。
予実管理は、大企業においては日常的な業務となっています。一方、中小企業では経営者の経験と直感に頼られることがよくあり、予算設定が行われていないケースも存在するようです。
しかし、大企業に限らず予実管理は重要です。ある程度の規模に達した中小企業では、運転資金や設備資金を金融機関から借り入れることがあります。また、新たにビジネスを開始する際に創業資金を借りるシーンも考えられるでしょう。
こういった際に必ず要求されるのが事業計画書で、金融機関はこの事業計画書を基に、借り手の企業に返済能力があるのか判断します。予実管理は、事業計画書を作成するうえで非常に役立ちます。
予実管理表は、エクセルでも作成可能です。エクセルで作る際には、次のポイントを意識するとよいでしょう。
それぞれの詳細について解説します。
Excelを用いた予実管理をする際には、項目の抜け漏れがないように注意が必要です。
予実管理表においては、当期予算、事業内当期累計、予算比、前年度比、分析に必要なポイントといった、分析に必要な項目の記入が必須です。
これらの項目を迅速に把握することが、予実管理表の利用目的です。予実管理に際して設けるべき項目には以下が挙げられます。
これらの管理項目を表の縦軸に設定し、横軸には先述した当期予算や予算比などの項目を配置すれば、予実管理が適切に機能しやすくなります。
上記項目は一例であり、求められる項目は事業の種類によって様々です。各種項目を更に詳細に管理する企業もあれば、項目を簡素化しシンプルにまとめる企業も存在します。自社に適した項目を選んで設定することで、事業に最も適した形の予実管理表を作れるでしょう。
予実管理表をゼロから構築する場合、多くの時間や労力が必要になり、導入が円滑に進行しないこともありえるでしょう。効率よく予実管理表を用意したい場合、テンプレートの活用がおすすめです。
無償で手に入れられるテンプレートを活用することで、迅速な予実管理表の作成が可能となります。
一例を挙げると、Microsoft Officeが無料テンプレートを提供しています。名目上は「経費予算」となっていますが、予実管理としても活用可能です。
この予実管理シートでは、カテゴリ別に経費を管理できるため、情報を整然と整理したい方におすすめです。ただし、シンプルなフォーマットとなっているため、自社に必要な項目が不足している場合は、独自項目を別途追加するようにしましょう。
やみくもに実施してしまうと、予実管理で得られるメリットが減少してしまいます。予実管理を行う際には、以下のポイントに注意することが大切です。
これらの点を意識して実施することで、予実管理の質を高められます。
毎月の予算と実績の違いを評価し、次月の業務改善に役立てるため、予実管理は定期的に実施しましょう。可能であれば、毎月実施することが好ましいです。高頻度で予実管理を行うことで、組織が期待するパフォーマンスと現実のパフォーマンスとの間の落差を狭められます。
予算と実績間の差分がどの部分から、なぜ引き起こされたか、細かく分析することが重要です。個々の項目において差異の生まれた理由を深堀りし、原因を明確にすることで、対策の策定や次回の予算編成の改善が可能となります。
また、予実差が発生する原因が残業による人件費や固定資産の減価償却等であった場合、その詳細は経理部門でも把握可能です。そのため、経理部門が詳細な分析を通じて発見した問題点や改善点を各部署に提供してもらうことで、効率的に予実管理の改善ができるでしょう。
予算が経営指標として適切に機能するよう、進捗が悪い場合には予算の再設定が必要です。たとえば、四半期や半期ごとに、初期の予算と実績との差異が大きい場合は、予算を再設定して、予算に則った成果を管理できるように努めましょう。
この際、ただ達成可能な予算を再設定するだけでなく、将来の成長や変動を予見して、少し背伸びをした予算に修正するのがおすすめです。高すぎず、低すぎない予算設定を行うことで、利益につながる予実管理を実施できます。また、具体性の高い予算を設定することも、質を高めるうえで効果的です。
予実管理の結果は単に「予算の達成」または「予算の未達成」で終わるべきではありません。組織の問題点、強みや弱みを明らかにし、それらから導き出される分析報告書を作成することで、経営に有用な資料として活用できます。
エクセルで予算管理を行うことで、効率的に数値の進捗を把握できますが、メリットだけではありません。エクセルを利用した予算管理には、次のような問題点もあることには注意が必要です。
昔から、エクセルは予実管理のツールとして頻繁に使用されていました。しかし、現場の担当者から、「セルや列・関数が勝手に変えられていた」「レイアウトが崩壊し、元に戻すのに苦労した」といった不満の声が数多く上がってきたのが実態のようです。
こうした問題への対応として、最近では、エクセルから予算管理システムへの移行を進める企業が増えてきています。
エクセルは無料で利用できるものの、フォーマットの改訂が難しい、集計業務に時間がかかるなどの問題があります。そのため、フォーマットの柔軟性や管理の効率性を求める方には、予実管理システムの導入がおすすめです。
予実管理システムとは、期首の予算計画と期末の成果を詳細に把握し、高度な分析を可能にするツールです。予実管理システムは、全組織規模での予算の管理を支援し、ビジネス上の迅速な意思決定を促進します。その他、次のような利点もあります。
また、予実管理の効率を向上させるためには、予実管理システムだけでなく、経営管理システムやERPの導入もおすすめです。 経営管理システムやERPは、企業の様々な業務を一つのシステムで一元管理できます。これにより、各部門のデータを集約し、共有することが可能になり、業務プロセスの効率化が図れます。
予実管理は企業が目標を達成し、収益を上げていくうえで必要不可欠です。エクセルを使うことで費用を抑えつつも予実管理ができますが、さまざまな問題点があるのが実状です。
予実管理を効率的かつ精度高く実施し、経営の意思決定の質やスピードを高めたい方は、予算管理システムや経営管理システムを導入するとよいでしょう。