予算編成とは、売上予算や経費予算など、複数の予算を事業計画にまとめあげるプロセスの総称です。そもそも予算とは、企業で決められた数値目標のことを言います。売上予算の場合は「どのくらいの売上を目標とするか」、経費予算の場合は「経費をどのくらいまで抑えるか」などの目標値が予算となります。
あらかじめ予算編成を立てておくことで目指すべき指標が可視化されるため、社内メンバーは同じ目標を目指して業務にあたることができます。
本記事では、予算編成の必要性や流れ、種類などを広く解説します。
企業で予算編成を行うことは義務ではありません。ではなぜ行うのでしょうか。ここでは予算編成の必要性を紹介、解説します。
予算を編成することで、手元にある資源(金銭、人力、時間など)を効果的に使用することができます。例えば、経費は使いすぎると企業が立ち行かなくなりますが、経費を削減しすぎても事業投資ができず、売上につなげにくくなります。適切に経費を消化することで、戦略的に投資を行えるようになります。
経費予算をあらかじめ作成すれば消化率をモニタリングできるようになるため、バランスよく資源を使うことができます。
予算編成を行うと、組織の目標達成に向けた進捗をモニタリングできるようになります。予算目標に対しどのくらいの実績が出ているかを確認できるため、進捗が遅れている場合はどの程度の資源が必要か、また戦略の再検討ができるようになります。
予算編成を行うと、チーム全体に共通の目標を周知できるようになります。どれだけのお金を使って、何を達成しようとしているのかが具体的になるだけでなく、全員が同じ方向に進んでいることを確認できるため「それぞれがどんな役割を担っているのか」ということが明確になり、社員の責任感の醸成にも繋がります。
予算編成は組織の財務健全性を保つため、また資源を適切に割り当てるために行われます。ここからは予算作成と改善までの流れを、6つのステップに分けて紹介します。
目標設定は、予算編成の最初のステップです。組織全体または特定の部門やプロジェクトの目標を明確にしていきます。
目標設定をする際は具体的・測定可能・達成可能・関連性がある・時間制限がある(SMART)な目標を設定すると、より目標を達成しやすくなります。予算を策定するためには組織全体の戦略を理解し、目指すべき目標を明確化していくことが大切です。
各部門が自分たちの目標を達成するために必要な指標を洗い出し、予算案を作成します。例えば売上予算や原価予算、経費予算などです。
この予算案を作成するためには、部門の収入と支出予測を正確に行うことが大切です。目標達成に必要な人的資源、物的資源、時間などを考慮に入れることで「難しすぎず、簡単すぎない」予算を作成することができます。
予算案が提出されると、上級管理者または予算編成チームがそれをレビューし、全体の組織の目標と予算に合うように資源の割り当てと調整を行います。組織全体の目標に最も効率的に対応できるように、資源を部門ごとにバランス良く配分します。
資源の割り当てと調整が終わった後、予算は最終承認を待ちます。通常は上級管理者や取締役会が最終的な承認を行います。このステップは、予算が組織全体の戦略と調和していることを確認するために必要です。
予算が承認されると、それに基づいた計画の実施が開始されます。そして、定期的に進捗状況をモニタリングし、目標達成に向けて必要な場合は調整を行います。モニタリングをすることで進捗状況の把握と問題の早期発見、及びそれに対する迅速な対応ができるようになります。
一定期間が終了すると、実際の結果と予算目標を比較し、その違いを分析します。これにより、どの部分が予想通りに進んだか、または計画から逸脱したかを理解することができます。改善策を次の予算計画に反映させていけば予算策定の精度があがり、組織の学習や発展が促されるため、効率的に組織運営ができるようになります。
予算編成を行うさいは、どのような点に気を付けたらよいのでしょうか。ここでは予算を編成するときの注意点を紹介します。
予算編成の根幹となる目標設定は「現実的」かつ「達成可能」な範囲に留めることが大切です。過度に楽観的な予算は実現困難となり、チームの士気を損なう可能性があります。一方、過度に悲観的な予算は、資源の最適な活用を阻害し、機会損失を生む可能性があります。
予算編成は、できるだけ精度の高い予測値から策定できるとよいでしょう。市場動向や経済の状況だけでなく、社内のリソースや過去のデータなどを収集し、分析をすることで予算の正確性を高めることができます。
予算の編成にはさまざまな部署が関わります。そのため、予算目標や進捗の度合いなど、過程と結果が全員に周知されていることが大切です。予算の透明性を保つことで、各関係者全員が自身の役割と組織全体の目標に対する責任感をもって業務を遂行できるようになります。
予算は一度作成したら固定というものではありません。市場の変動や新たなビジネスチャンスの出現はもちろん、予期せぬ問題の発生、思ったより進捗が芳しくないなど、さまざまな形で予測が外れることがあります。状況の変化に合わせ、フレキシブルに見直せる体制を整えておくことが大切です。
予算の進行状況を定期的にレビューすれば問題点が起こった際も早期に発見・対応できるようになります。実績値を見直す時間を先にスケジューリングし、目標達成の進捗を把握することが大切です。必要に応じて早期に改善策を立てることができます。
予算編成は単なる財務の計画作成ではなく、組織の戦略を具体化する手段とも言えます。したがって、予算を編成する際には組織全体の戦略的な視点も考慮に入れることが大切です。
予算は大きく「収入」と「支出」に別れます。予算編成に明確な決まりはありませんが、様々な種類の予算について理解しておくと、財務管理の効率性と効果性を高めることができます。
収入にかかる予算には「売上予算」や「利益予算」があります。
売上予算は、組織が一定期間内に得ることが見込まれる収入の予測値です。商品やサービスの販売から得られる収入を想定したうえで売上目標を定めていきます。予算を定める時は市場の変化や原価なども考慮にいれておきましょう。
利益予算は、収入から直接的な経費や費用を差し引いた後の純利益を見積もる予算です。売上予算よりも組織の収益性を評価できるため、経営の健全性と成功を示す重要な指標となります。また、利益予算はコスト管理を改善し、より効率的な資源の使用を促すための基盤ともなります。
支出にかかる予算には「原価予算」や「経費予算」などがあります。
原価予算は商品を生産またはサービスを提供するために直接的に発生する費用を見積もって算出します。何を原価と設定するかは企業によっても異なりますが、例えば材料費、人件費、製造費などです。原価予算は製品の価格設定や利益マージンの計算、さらには経営陣が製造プロセスを効率化するための情報提供に役立ちます。
経費予算は、直接的な製品製造やサービス提供に関連しない運営費用を見積もるための予算です。例えば人事、マーケティング、IT、設備の維持・更新などのコストが含まれます。経費予算を策定すると必要な運営コストを把握でき、これらのコストが収益を上回ることなく適切に管理されていることを確認することができます。
予算編成は、企業が目標を達成するための重要な手段であり、それぞれの部門が同じ目標に向かって効率的に業務を進めるために大切です。企業全体での予算編成のポイントを理解し、より効果的な予算計画を立てましょう。
経営管理クラウド「Loglass」は、アナログ運用の多い、経営管理領域のデータを一元化。予算策定、予実管理、見込更新、管理会計のフローを効率的に仕組み化し柔軟に”次の一手”を打ち出せる機動力を届けます。