そもそも会計とは、経済活動の収支を適切に認識・記録し、利害関係者に対する報告を実現する行為全般のことです。会計は、管理会計と財務会計という2つのカテゴリに大別できます。
管理会計は、経営の戦略を練る上で必要な情報を提供する会計です。一方、財務会計は企業の財務状況を外部の利害関係者に明示する役割を果たすものです。
法律的には、全ての会社は財務会計を行わなければなりません。しかし、管理会計に関しては法的義務ではなく、企業ごとにその採用や具体的な方法が異なるケースが少なくないようです。
本記事では管理会計と財務会計の具体的な違いや、よくある課題とその解決策についてご紹介していきます。
財務会計とは、一言で表現すると「社外の利害関係者向けの会計」です。
投資家や債権者、税務署などの外部ステークホルダーに対して、財務状況や経営の現状を開示します。公開された情報は、株主にとっては株式の保有や売却を考える際の基盤となり、金融機関では融資を行うかどうかの判断材料として用いられます。
事前に決められた会計基準に従い行われ、期末に決算報告書として外部に公開されるのが財務会計の特徴です。
財務会計の目的は、企業の経済活動や取引を正確かつ客観的に記録し、それを外部の関係者に伝えることです。
具体的には、日常の取引や営業活動が、有価証券報告書や税務申告書に付属する財務諸表に反映・表現されます。これを通じて、外部の関係者は、正確で包括的に反映された財務諸表を参照し、経営状態や財政状況の把握ができるようになります。
投資家や金融機関などの外部関係者は、その情報をもとに投資や融資の意思決定を行なうため、正確で透明性のある情報を公開することが財務会計では必要です。
財務会計の代表的な業務は以下の4つです。
それぞれの詳細について解説します。
仕訳伝票の作成や入力は、財務会計の業務の中心を成すものです。経理部に集約された様々な取引データが、仕訳伝票に記載されます。
仕訳伝票は、取引日や借方・貸方の勘定科目、金額、作成者の印、そして伝票の承認印などの重要な情報を持つものです。作成した伝票は、金融取引を正確に追跡・記録するのに役立ちます。
仕訳伝票作業以外にも、帳簿の作成や試算表の整備なども財務会計の業務です。これらの作業により財務状況を総合的に捉えられ、適切な経営判断を下す土台を築けます。
原価計算は、製造業などにおいて製品やサービスの生産・提供にかかるコストを算出することです。算出したコストは、収益性を正確に評価するための基盤となり、適切な価格設定やコスト管理の策定に寄与します。原価計算は決算書の作成だけでなく、予算の管理や製品の売価の設定の際にも使用されます。
固定資産とは、会社が長期にわたって持ち続け、販売を目的としない資産のことです。具体的には、土地のように時間が経過してもその経済価値が減少しないものや、建物や備品のように使用に伴って価値が徐々に下がるものが挙げられるでしょう。
固定資産の中でも、価値が減少していく種類のものについては、「減価償却」という手法が採用されます。これは、資産の経済的な価値が時間や使用により減少することを予見し、決められた利用期間に沿ってその価値を計上する方法です。こうした計算は、経済状態を正確に反映させるために役立ちます。
決算は、取引データの集計を行い、貸借対照表や損益計算書などの決算書を作成する業務です。決算にも種類があり、1年間を対象としたものは「年次決算」と呼び、1ヶ月ごとのものを「月次決算」と称します。
決算書作成は、経理業務の中でも特に注目される部分であり、外部の投資家や銀行などが財務健全性や業績を評価するのに役立つものです。
管理会計は、内部から経営を支えるための会計手法であり、「社内向けの会計」である点が特徴的です。
これは財務会計とは対照的です。財務会計が外部の利害関係者へ情報を提供するのに対して、管理会計は、経営者や管理責任を持つ従業員に、経営の方向性や事業改善のための具体的な情報を提供します。経営者が利益増加のための戦略を考える際や、新しい事業展開の可能性を検討する時に、管理会計の情報が有用です。
管理会計が提供する情報の内容や形式は、全企業で統一されていません。どのような情報が経営に役立つかは、規模や業種、経営方針などによって変わるため、個々の企業の裁量とされています。
管理会計は、経営者を中心とした内部の意思決定者が、より適切な経営判断を行うための情報提供をすることが目的です。内部向けの会計情報であることから、その情報は外部に公開されることはありません。そのため、管理会計は法律や外部基準に縛られることが少なく、各企業が独自に適切と判断する情報を中心に集計や分析が行われます。
管理会計の業務は、以下の4つに大別できます。
それぞれの詳細について見ていきましょう。
経営分析とは、財務諸表や調査報告、特殊調査などの情報源を活用して、企業の健全性や問題点を明らかにするために実施される分析です。自己資本比率をはじめとした種々の指標を用いて分析することで、企業の状態を多角的に可視化します。
経営分析の手法は、収益性分析や安全性分析、損益分岐点分析などです。
例えば、収益性の分析では企業の利益能力を、安全性の分析では企業の財務リスクを評価します。これらの指標を組み合わせることで、経営の健全性や効率性、将来性を総合的に評価します。
経営分析の目的は、経営者や関連するステークホルダーが企業の現状を客観的に理解することです。この分析を通じて、企業の収益力や資産運用の安全性などを具体的に評価できるようになり、企業の強みや弱み、そして改善すべき課題を特定できます。
経営分析の手法・指標に関して、表にまとめました。
予実管理は、経営目標に基づき設定された予算と実際の業績との比較を行い、軌道修正をしていく業務です。
予実管理のメリットは、予算と実績の差異を把握することで、目標達成に向けた具体的なアクションや必要な予算の調整が行えるようになることです。予実管理が役目を果たすのは、単に業績が予想以下であった場合だけではありません。予算の設定が過大であった場合にも、見直しなどの対策を講じるのに役立ちます。
資金繰り管理は、資金の流れを正確に追跡し、適切に調整していく業務のことです。具体的には、日常の入出金を詳細に監視することで、資金の過剰や不足を適時に発見し、調整をしていきます。
この手法の採用により財務状況をタイムリーに把握でき、経営の安定性や持続可能性の確保が可能です。また、債権を現金化できるタイミングを知ることにも役立ち、未来の資金調達の目処も立たせられます。
資金繰り管理の実施方法としては、Excelなどの表計算ソフトを用いて手動で入力するのが代表的です。しかし、この方式は時間がかかるため、効率的でないというデメリットがあります。そのため、業務の効率化や作業負荷の軽減を望む企業は、債権や債務の情報を自動で取り込める専用の会計システムの導入を検討すべきでしょう。
原価管理は、原材料費や部品のコスト、人件費や設備費といった原価を可視化する作業です。原価を明確に可視化することで、各コストが適切かどうかを判断し、適切でない場合はコスト削減の取り組みを行います。
原価管理の目的は、各費用項目の詳細な分析を通じて、利益が出ない原因やコストの無駄を特定することです。特に製造業などの物品を生産する産業では、原価管理は経営状況の正確な把握や利益最適化のための重要な手法として採用されています。したがって、製品やサービスのコストに関心を持つ企業は、原価管理を積極的に導入するべきです。
管理会計と財務会計の大きな違いは、以下表の通りです。
企業が管理会計を導入する際、その導入目的の明確化は極めて重要です。また、いつ導入を行うか、つまり導入のタイミングを定めることも大切でしょう。
例を挙げると、決算期の忙しい時期に無計画に進めると、スタッフの負担を増大させ、不必要な混乱を生む恐れがあります。このため、計画的な導入を心がけ、スタッフへの十分な説明や意見収集は欠かせません。
経営層の間で意向や方針が異なる場合、それは導入の足かせとなることも考えられます。指示がバラバラであることで、意思決定の遅れや業務の進行における混乱が起こるかもしれません。経営層が一貫した指示や方針を出すことで、現場の混乱を避け、管理会計の導入を円滑に進めることができるでしょう。
導入環境の整備も非常に重要です。管理会計のフォーマットやシステムは企業ごとに異なり、単なる会計の知識だけでは対応が難しいものです。特に初めての導入の際は、会計事務所やシステム提供会社からのサポートから受けることをおすすめします。
導入後にも注意が必要です。管理関係は導入して終わりではありません。導入後の効果や適用性を定期的に検証し、改善や調整を繰り返すことが、経営の質を向上させる鍵となるでしょう。
管理会計では、以下の3つの課題が発生することが少なくありません。
データ集計・アクセスに手間や時間がかかることから、担当者には大きな負担がかかり、別の重要な業務へと十分なリソースを避けなくなります。
経営企画ツール「Loglass」は、管理会計での課題を効率的に解決します。