ゼロベース思考は、既存の制約や前提に縛られずに新しい視点で問題解決に取り組む方法です。この記事では、ゼロベース思考がどのようなシーンで有用であるのか、そのメリット・デメリット、そして具体的な実践法について詳しく解説します。
「ゼロベース」とは「何もない状態からスタートする」という意味です。ゼロベースという言葉は多くの文脈で使用されていますが、ビジネスやプロジェクトマネジメントにおいては「既存の制約や前提に縛られず、全てをゼロから考え直すアプローチ」という意味で使用されます。
たとえば「ゼロベースの予算作成(ゼロベース・バジェティング)」という文脈で使用する場合は「前年度の予算に依存せず、新たな年度の予算をゼロから見直す」という意味になります。思考をゼロベースにすることで不必要な支出を削減し、より効率的な予算配分が可能となります。
ゼロベース思考は多くのビジネスシーンや日常生活で有用な考え方ですが、特に以下のような状況でその価値を発揮します。
何かがスムーズに進まない、または資源が無駄に使われていると感じた場合は、ゼロベース思考でプロセスや予算を見直すとよいでしょう。古い方法に囚われていると、物事が行き詰ってしまうことがあります。過去の過ちを脱却すべく、新しい視点で効率を追求することが求められます。
新しいプロジェクトを始める際には、前例に縛られずに全体の計画を考えるゼロベース思考が有用です。ゼロベースで考えることでイノベーションを生む可能性が高まり、既存のフレームワークの制約から解放されます。
失敗は「既存の方法や思考が不適切であった」結果といえます。そのため、何かに失敗した時はゼロベースで再構築すると失敗の原因を的確に特定でき、同じ過ちを繰り返しにくなります。
競合が新しい製品やサービスを出したり、規制が変わったりした場合、ゼロベース思考で戦略を再評価する必要があります。この思考法であれば、環境の変化に素早く適応し、競争力を保つことが可能です。
ビジネスやキャリアが頭打ちになったと感じたら、ゼロベース思考で全体を見直しましょう。新しい方法や戦略を探求することで、停滞を打破するきっかけを見つけることができます。
「なぜこんなに複雑なのか」「もっと簡単にできないのか」といった疑問を持った時も、ゼロベース思考で解決策を探すべきシーンであるといえるかもしれません。不必要な複雑性を排除できれば、効率性が向上します。
急速に変わる状況や不確実性が高いプロジェクトでは、ゼロベース思考が新しい解決策を見つける手助けとなります。柔軟性が求められる状況で、既存の方法に固執せず、新しいアプローチを模索することが大切です。
ゼロベース思考は、戦略策定の際などのシーンで非常に役立ちますが、一定の課題も存在します。ここではゼロベース思考を採用した際に起こり得るメリットとデメリットについて解説します。
1.効率的なリソース配分
ゼロベース思考を採用すると無駄な支出や活動を排除し、必要なリソースだけを厳選することが可能です。例えば予算や時間が限られたプロジェクトである場合、最も効果が高くなるようにリソースを分配しなくてはなりません。資源を最大限に活用するために、ゼロベース思考は有用となります。
2.柔軟な戦略変更
ゼロベース思考で物事を考える癖がついていると、新しい状況や問題に迅速に対応できるようになります。既存のフレームワークに囚われず、必要に応じて戦略を変更できるのは、競争の激しいビジネス環境で非常に価値があると言えるでしょう。
3.イノベーション促進
ゼロベース思考を導入すると既存の方法にこだわらなくなるため、新しいアイデアや手法を試行できるようになります。このようなトライ&エラーを行うとVUCA時代と呼ばれる不確実性の高い時代でイノベーションを起こしやすくするため、これからの生存戦略として非常に重要です。
4.明確な目標設定
物事が複雑化している時でも、ゼロベース思考に立ち返ると何を達成したいのか、どのようにそれを達成するのかが明確になります。目標設定が明確であるほどチームの連携を強くし、実行段階でスムーズに行動できるようになります。
1.時間と労力がかかる
全てをゼロベースで考えると時間と労力がかかる場合があります。特に大規模なプロジェクトや組織運営を考える際に毎回ゼロベースで思考しているとプロジェクトが前に進まない可能性があります。
2.過度な分析
ゼロベースで考えていると分析作業が多くなるため、分析麻痺(過度な分析による行動の停滞)が起きるリスクがあります。適切なバランスと行動への転換が求められます。
3.リスクの増加
既存のプロセスを大きく変更すると、新たなリスクが生じる可能性があります。事前にしっかりとしたリスクアセスメント(リスクの除去)が必要です。
4.内部抵抗
ゼロベースで考えられた施策に対し、既存の流れに慣れているスタッフが抵抗する場合もあります。このような抵抗を乗り越えるには、内部のコミュニケーションと説明が欠かせません。
ゼロベース思考を効果的に活用するためには、いくつかのステップがあります。このセクションでは、ゼロベース思考を身につけるための具体的な方法について解説します。
1.自己評価を行う
まず、自分自身や組織の現状をしっかりと評価します。目標達成に対してどれだけ効果的に行動しているのか、自問自答することが重要です。
2.目標を明確にする
何を達成したいのか明確な目標を設定します。目標が明確であれば、それに対する戦略や行動計画も明確になります。
3.既存の方法を疑問視する
既存の方法やプロセスをそのまま受け入れず「なぜそのような方法が採られているのか」「本当に効果的なのか」などを疑問視し、本質に立ち戻ります。
4.優先順位をつける
全てのタスクや活動に優先順位をつけ、最も重要なものから順に取り組むようにしましょう。限られたリソースを最も効果的な方法で使用できます。
5.定期的なレビュー
行動計画を実行した後は、定期的に効果をレビューし、必要な調整や改善を行い、更なる効率化を目指します。
ゼロベースの予算編成(Zero-Based Budgeting、ZBB)とは企業が新しい予算計画を策定する際に使う手法で、既存の予算や過去の実績を基にせず、すべての支出項目を「ゼロ」から詳細に見直して優先度をつけて、予算を新たに割り当てる方法です。この方法は1970年代にアメリカで開発され、その後多くの企業や公共機関で採用されてきました。各種支出についてゼロベースで考えることで厳密な検証と評価を可能とし、企業資源を最も効率的に活用できるようになります。
ZBBは主に二つの基本ステップから構成されています。第一のステップは「デシジョン・パッケージ」の作成です。各アクティビティに関する情報(目的、影響、費用など)を細かく分析し、独立した「デシジョン・パッケージ」としてまとめます。第二のステップは「デシジョン・パッケージ」を優先度に基づいてランク付けし、その結果を基に予算を割り当てることです。
ゼロベース予算編成(ZBB)を理解する上で欠かせない概念が「デシジョン・パッケージ」です。デシジョン・パッケージとは、特定の業務やプロジェクトに関する詳細な情報をまとめたものをいいます。この用語は一見難解に感じるかもしれませんが、デシジョン・パッケージは企業や組織が資源を効率的に配分するための非常に実用的な情報となります。
デシジョン・パッケージには、以下のような要素が含まれます。
デシジョン・パッケージを作成したあとはマネジメント層によって「重要度」や「緊急度」に基づいてランク付けされます。このランク付けが、資源の配分や予算割り当てに大いに影響を与えます。
ゼロベース予算編成(ZBB)の最大の特徴と利点は、柔軟性と効率性にあります。ゼロベース予算編成を行うことで実行される施策は多角的に評価されるため、資源を最も効率的な方法で配分できるようになります。特に、財政が硬直化している組織や、新規事業と既存事業のバランスをより効率的に管理したい場合は財政状態の改善が見込まれるため、ゼロベース予算編成は非常に有用な手法とされています。
ゼロベースで考えるためには、情報収集が非常に重要な要素となります。物事の全体像を理解するためには、今利用可能なリソース、そして存在する制約についての情報が必要です。また資源を効率的に配分するためにも「コストと利益」を精緻に評価する必要があります。正しい情報が精緻に収集されていると、リスクや潜在的な問題を早期に特定することもできます。
しかし、予実管理は一般的にExcelやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフトを用いて、手入力で行われています。このような状況では工数がかかるだけでなく、ヒューマンエラーやデータ量の多さによる遅延が発生しがちです。さらに部門数やプロジェクト数が多い場合や、子会社を多く抱えている場合などは各所の予算と実績のデータをマージする作業が新たに発生することとなります。
世の中の流れが早くなっている現代で、データ収集が遅れたり、間違った情報が収集されてしまうと、企業と競争力が落ちる原因となります。
経営管理クラウド「Loglass」は、予実管理に特化したPRPシステムです。アナログ運用の多い経営管理領域のデータを一元化することで情報収集が簡単かつ正確に割り出すことができるようになり、柔軟に”次の一手”を打ち出せるようになります。管理会計になじみのないメンバーでも使いこなせるUI/UXを兼ね備え、現場のストレスを大きく減らすことに貢献します。
ゼロベース思考は、ビジネスシーンだけでなく、日常生活でも非常に有効な考え方です。特に効率が求められる場面や新しいプロジェクトを始める際には、この思考法が役立つでしょう。しかし、その効果を最大限に活用するためには、正確な情報収集とその分析が不可欠です。
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