2023-10-06
Loglass編集部
約5分
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S&OPとは?成功のために企業が取るべきステップと失敗を避ける方法

S&OPとは?成功のために企業が取るべきステップと失敗を避ける方法

近年、市場の変動性が増す中、消費者の要望を即座に捉え、柔軟に対応するサプライチェーン運営の重要性が高まってきました。この動きの中で、特に注目を集めるのがS&OPです。日本においてもS&OPの有効性が広まりつつありますが、実際の適用例がまだまだ少なく、どのように進めれば良いか疑問に思う方も多いことでしょう。

本記事では、S&OPの核心から具体的な運用方法、よくある課題までを詳しく紐解き、市場の変動に対応するための秘訣をお伝えします。

S&OPとは

S&OP(Sales and Operations Planning)、すなわち「販売・操業計画」は、サプライチェーンの最適化を実現することを目指す経営戦略です。サプライチェーンの最適化とは、消費者の要望を即座に捉え、それに応じて生産・流通・販売のプロセスを効率的に運営することです。

S&OPでは、経営や製造、販売など多岐の部門が、社内情報を効率的に共有・可視化できる環境を整備して意思決定を速めることで、サプライチェーンの最適化を目指します。

S&OPを徹底的に活用することで、いくつかの具体的な成果が期待できます。例えば、納期の遵守や在庫の適正化、コストの削減が挙げられるでしょう。ひいては企業の利益目標の達成も期待できます。

S&OPは、海外で広まった概念です。日本の企業でもS&OPの導入が進められていますが、完全に取り入れられているところはまだ限られているようです。

SCMとS&OPの違い

SCMとS&OPは、製品の供給プロセスを管理する点で似ていますが、その管理の焦点が異なります。

SCM(Supply Chain Management)は、製品を作るための原材料を手に入れる初めのステップから、完成品が消費者の手元に届く最後のステップまでの流れを効率的にする手法です。ここでの管理の中心は「モノ」、つまり製品そのものやそれに関連するものです。「カネ」という要素はこのSCMの中心には含まれていません。

例えば、ある会社が自動車を作るとしましょう。SCMの視点では、鉄やガラス、ゴムなどの材料をどこからどのようにして手に入れるか、それらの材料をどの工場でどのように組み立てるか、そして完成した車をどうやってディーラーや顧客のところまで運ぶか、というモノの流れに注目します。

一方、S&OPはモノの流れの管理だけに留まりません。それにかかるカネをどのように計画し、運用するかという部分も強く意識します。SCMが「モノの流れ」に重点を置くのに対して、S&OPは「モノの流れとそれに関わるカネ」の双方に焦点を当てているのです。

S&OPが求められている理由

近年、企業の国際展開や収益を重視する動きが広がる中、S&OPの存在意義が増しています。S&OPの考え方が生まれたのは随分と昔で、1988年にアメリカでオリバー・ワイト社によって提唱されました。変わりゆく市場に対応するため、SCMの「モノ」の管理に「カネ」の観点を追加し、事業の計画達成度を上げるアプローチとしてS&OPが生まれたようです。

S&OPのメリット

S&OPの導入は、企業のサプライチェーン管理を革新的に向上させるのに役立つでしょう。

S&OPでは、部門全体が情報を可視化・共有することを促進し、効率的な意思決定を可能にします。また、納期遵守、在庫の適正化、コスト削減の推進にも寄与するでしょう。

例えば、ある製造業の企業がS&OPを導入すると、製品の生産計画や販売計画をリアルタイムで更新・共有できるようになります。これにより、突然の需要の変動やサプライチェーンの中断が発生した場合でも、すばやく適切な対応をとれるようになります。また、在庫の過剰・不足を大幅に減少させることもでき、結果的に業績の向上までつなげられるでしょう。

S&OPの導入は企業にとって、サプライチェーンの効率性と経済性を大きく向上させる有効な戦略なのです。

S&OPの取り組み方:7つのキーポイント

S&OPの成功の秘訣は、目的が明確な計画を作成し、それを順守することです。以下、成功への道のりを明確にする5つのポイントを紹介します。

ポイント1:事業目標への明瞭な道筋

S&OPをうまく運用するためには、具体的なシナリオが不可欠です。自社の能力を客観的に判断し、どのシナリオが目標達成に適しているかを判断します。目標設定の際、それぞれのシナリオに具体的な数値を持たせ、その根拠を明らかにすることが大切です。

具体的なシナリオとは、未来の特定の状況や条件を詳細に描写したものです。例えば、新製品販売の場合は、以下のようなシナリオが挙げられるでしょう。

  • 新製品ブームシナリオ:新製品がヒットし、一時的に需要が上昇
  • 競合製品の参入シナリオ:競合製品が登場後の状況
  • 長期定着シナリオ:新製品の需要が安定して継続

これらのシナリオを基にS&OPの具体的な目標や戦略を数値化し、明確にすることが重要です。

ポイント2: 実行計画と評価指標の調整

シナリオ作成後は評価指標の選定も重要です。不適切な指標を設定すると、目標達成の妨げになる恐れがあるので、適切な指標の選定を心掛けましょう。

コストや売上をはじめとした財務指標や、顧客や業務プロセスに関する非財務指標が考慮されることが多いです。

事業が顧客満足度の向上を目指している場合、単に売上高の増加を主な評価指標とすると、短期的な売上追求の結果、顧客満足度の低下を招く恐れがあります。この場合、非財務指標である「顧客満足度」や「リピート購入率」などの指標を併用することで、より適切な事業評価と方向性の確保が期待できます。

ポイント3: 定期的な見直し

始めに設定したシナリオや基準は、時間や市場状況の変化により最適ではなくなることがあります。そのため、定期的にシナリオや計画の評価を行い、必要に応じて見直しや調整をすることが大切です。市場の変化に迅速に対応するための柔軟な体制作りが、S&OPの成功への鍵となります。

ポイント4: 迅速な意思決定のガイドラインの整備

意思決定の基準と担当者を明示しておくことで、迷いなく迅速な判断が可能となります。誰が、どのタイミングで、どの基準で意思決定を行うのか、明確にしておくS&OPの進行がスムーズになります。

ポイント5: グローバルIT環境の整備

意思決定を円滑にするため、データの可視化と迅速な取得が求められます。これには、グローバルで統一されたIT環境の構築が必須です。 データ共有の仕組みを整えることで、経営層と各部署との情報共有が効率的に行え、意思決定の精度も向上します。

ポイント6: 小規模からスタートする

全社でのS&OPの実施を急ぐと、取り組む人数が増加し、社内への浸透が困難になることがあります。そのため、はじめは限られた範囲でのS&OPの実施を推奨します。この「スモールスタート」により、大きな負担なく徐々に成功体験を積み上げていけるでしょう。準備が整ったタイミングで、全社的な導入に移りましょう。

ポイント7:.KPIを的確に選定

S&OPの精度を向上させるためには、適切なKPI(重要業績評価指標)の設定が不可欠です。KPIとは、評価指標の中でもとくに業績に与える影響度が高く、重要な指標を指します。

S&OPの正確性は、各部門の実績や活動をどれだけ正確に評価できるかに依存します。KPIは事業の進捗を評価するうえで役立ちます。

製造部門では「生産量」や「生産の遅延率」、営業部門では「受注数」や「クレームの発生率」など、各部門特有の重要な指標をKPIとして設定するとよいでしょう。

KPIはS&OPで重要な役目を果たすものの、一度に多数設定し、全てを同時に管理するのは厳禁です。その運用は複雑化し、管理が容易ではなくなるのが一般的です。そのため、初めは数個の主要なKPIからスタートし、企業の状況や必要に応じて徐々にKPIを増やしていくのが定石です。それにより、効果的にS&OPを実施できるようになります。

S&OPでよくある課題:企業がつまづくポイント

多くの企業は、S&OPの実施に際して以下のような課題につまずきます。

  • 不完全なデータ活用
  • 組織間のコミュニケーション不足

これらの問題の原因を特定し、適切に対策を講じていくことが大切です。

不完全なデータ活用

S&OPを進めていくうえではデータの活用が重要ですが、データの活用に関して誤りや不足が生じることが少なくありません。

ある製造業の企業は、過去の売上データを基に生産計画を立てました。しかし、そのデータは不完全であり、特定の時期の売上が抜けていたため、実際の需要に合わない生産計画となり、在庫過剰となってしまいました。この企業の失敗の原因は、不完全なデータの活用にあります。

したがって、正確なデータを入手できる環境を整備することは、S&OPを成功に導くうえで重要です。

組織間のコミュニケーション不足

S&OPを効果的に運用するためには、部門間のスムーズなコミュニケーションが必要です。

S&OPはさまざまな部門が連携する活動です。齟齬なく取り組みを進めていくためには、一つの部門の意思決定が他の部門にもしっかりと共有されなければなりません。

ある企業では、営業部門が特定の商品のプロモーションを計画していましたが、製造部門との連携が十分ではありませんでした。それにより、商品の在庫が足りず、納期を守れない状況が発生してしまったようです。

この失敗事例からもわかるように、部門間のコミュニケーションが不足すると、効果的なS&OPの運用は妨げられます。

S&OPを効率的・効果的におこなうには経営管理ツールの活用がおすすめ

S&OP導入・運用にまつわる問題を解決するための1つの手段は、社内情報をスムーズに共有できるツールを使うことです。ここではその1例として、経営管理ツールの「Loglass(ログラス)」をご紹介しましょう。

ログラスは一元的なデータ管理に長けています。表計算ソフトや会計ソフトからのデータをワンクリックで統合・反映できる機能を持ちます。これにより、S&OPプロセスでの多種多様なデータの収集や整理を大きく効率化できるでしょう。

また、S&OPでは、組織の変動や再編が起こった場合、それに伴うデータの再整理や調整が必要になることが少なくありません。ログラスには組織・科目階層の変更を簡単に管理できる機能があるため、そうした課題にも柔軟に対応できます。

まとめ

S&OPは、企業のサプライチェーン管理の中でも特に重要なプロセスとして位置づけられ、SCMとは異なる要点を持ちます。

S&OPを適切に機能させられれば、部門全体が情報を円滑に可視化・共有できるようになり、効率的で効果的な意思決定が可能になるでしょう。

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執筆者
Loglass編集部

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