ビジネスマンにとって、損益計算書(PL)や貸借対照表(BS)の理解は必要不可欠。ですが、どの指標をどのように見たらよいかわからなかったり、PLとBS双方の関連性がよくわからず、苦手意識がぬぐえないという人も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、PLとBSの違いと、それらのビジネス現場での活用法について解説します。
BSとPLの理解にはこちらの記事も参考にしていただけます。
BS(貸借対照表)とPL(損益計算書)のすべて:3分で理解できる基礎から応用まで
PL(Profit and Loss statement、損益計算書)とは、一定期間内における損益を明確にし、事業の収益性とコスト効率を可視化するための財務報告書。一方、BS(Balance Sheet、貸借対照表)は特定の日時点での企業の資産、負債、資本のバランスを示す財務報告書です。
それぞれの機能を八百屋さんの例を用いて分かりやすく解説してみましょう。
PLはある一定期間の収益と費用を明らかにします。例えば、八百屋にとって期間中に売れた野菜の総額(収入)と、野菜を仕入れるために支払った金額や店舗維持費など(費用)の差を示すことで、利益を計算します。つまり、八百屋さんがその期間にどれだけ儲けたか、または損をしたかを把握するのに役立つのがPLというわけです。
一方、BSは特定の日時点での企業の資産、負債、そして自己資本のこと。たとえば、八百屋が店を運営するために持っている製品在庫や設備(資産)、仕入れ先に支払うべき未払い金や借り入れ金(負債)、そして負債を差し引いた残り(自己資本)を示します。これがBSであり、八百屋が健全に経営を続けられるか、または何らかの改善が必要かを判断するのに役立ちます。
ビジネスにおいては、これらのレポートを活用して効率的な運営管理が求められます。具体的には、PLを用いてコスト削減のポイントを見つけ、そしてBSを用いて企業の負債比率を算出し、借入れ可能な範囲を把握する、というような格好です。
ただし、これらの報告書を有効に活用するには「背景知識」が必要です。数字だけを見て判断するのではなく、それらがどのように生成されたのか。ビジネスモデルを踏まえたうえで、理解することが重要となります。それにより、PLやBSが示す数値が企業の真の状態を正確に反映しているかどうかを適切に評価することが可能となります。
ここからは具体的に、PLとBS双方の着眼点や活用法についてもふれていきましょう。
PL(損益計算書)は売上高、費用、利益などを項目別に表示することで企業の収益状況を把握可能にする財務報告書の一種です。主な構成要素は、以下のとおりです。
項目 : 説明
売上(収益): 製品やサービスの販売から得られる収入を表す。
営業費用: 商品の生産やサービスの提供に必要な費用を表す。
売上原価: 売上を得るために直接的にかかった費用を示す。
営業利益: 売上から売上原価と販売費・一般管理費を引いたもの。
経常利益: 営業利益に金融収支などを加えたもの。
純利益: 税引後の実際の利益を表す。
【一般的な見方と理解の方法】
PLを読み解く際には以下の点を注意して見ると良いでしょう。
それぞれの項目に共通して注意しなければならないのは、「業種によって利益の出方やコスト構造が異なる」という点です。そもそも、利益率はビジネスモデルにとっても大きく異なりますし、一見コストが多く不経済な状況であっても、それが戦略上の投資期間なのであれば話は変わってきます。PLを読む上では、単に売り上げや利益が多いかどうかだけではなく、「自社の戦略との整合性」という観点から分析することが必要になってきます。
PL(損益計算書)は、事業の収益と費用を明確に表示するツールであり、経営者やリーダークラスの方々にとってコスト管理や効率化の戦略を考える上で欠かせません。しかし、このツールを最大限に活用するためには、それぞれの項目が何を示しているのか、どのように利活用すべきかを理解することが重要です。
次に、BSについても触れてみましょう。先述の通りBSは、会社の財務状況を一定時点で表したもの。企業の資産、負債、純資産のバランスを示しており、大きく三つの構成要素から成り立っています。
BSの見方には例えば以下のようなポイントがあります。
BSを詳しく解析することで、会社の財務状況についてより深く理解することが可能になります。これは、経営戦略の策定や投資判断において極めて重要な知識となります。
PL(損益計算書)は、一定期間における企業の収益と費用を表し、その結果としての利益または損失を示すのに対して、BSは一定時点での企業の財務状況を示します。そのため、PLとBSを合わせて読むことで、企業の過去から現在、そして未来へ向けての経済的な動きを一望することができます。
例えば、レストランを経営しているとしましょう。
先述の通りPLは、ある一定期間(例えば1ヶ月)のレストランの「売上」(=収益)と「経費」(食材費や人件費等=費用)を記録したもので、「その月の結果(利益または損失)」を示します。これを見れば、「先月はお客さんがたくさん来て、たくさん売れたけど、高級食材をたくさん使ったから経費がかさんでしまい、結局あまり利益にはならなかった」というようなことが分かります。
一方、BSはある一定の時点(例えば今日この瞬間)でのレストランの「財産」(例えば建物や調理器具、あとはこれから使う食材のストックなど=資産)と「借金」(例えばローンや仕入れ先への未払い金など=負債)を記録し、「レストランが今、どんな財政状態にあるか」を示したもの。
、これらをあわせて見ることで、「レストランのビジネスが、過去から現在、そして未来へ向けてどう動いているか」を把握することができます。
例えば、「PLを見たら先月は大幅な赤字だったけど、BSを見たら建物や高級調理器具などの財産がしっかりある。つまり、しっかりした設備があるから高級な料理が作れる状態ではある」。「食材費が高くて経費がかさんでしまっているんだな」と分かれば、「もっとコストパフォーマンスの良い食材を使ってみよう」「無駄な経費を削減しよう」といった経営改善策が見えてきます。
これはかなりシンプルな例ですが、こうやってPLとBSを理解しておくことで、ビジネスの現状を把握し、どう改善していけばいいかのヒントを得ることができるのです。
収入と支出のバランスは、企業の健全性を判断するために非常に重要です。収入が支出を上回っていれば黒字、逆であれば赤字となります。この収支のバランスをPLで確認し、その原因を分析することで収益改善策を立てることが可能になります。またBSからは、借金の多寡や資産の流動性等を確認し、長期的な安定性や将来に向けた投資可能性を判断することができます。
特に経営管理においては、短期的な利益だけを追求するのではなく、長期的な視点を持つことが重要です。短期的な利益を追求するあまり、長期的な成長を阻害するような投資や経営判断をしてしまうことは避けたいです。BSやPLを使って企業の健全性を把握し、長期的に安定した経営を目指すべき。その視点でいえば、短期的にPLを見るだけでなく、一定の区切りを設けて継続的にBSにも目を配ることが、企業の健全な成長につながるのです。
以上のように、PLとBSの理解と活用は企業の健全な経営に不可欠です。具体的な活用方法や事例については、売上分析やコスト管理など、各企業の経営状況により異なりますが、両者を理解し適切に活用することで企業の経営効率を飛躍的に向上させることが可能です。