2023-10-06
Loglass編集部
約3分
Study

Capexとは?理解して企業分析に活かす基本知識とその見方

Capex(キャペックス)とは、「Capital Expenditure」の略語であり、「資本支出」を指す専門用語。建物や機械設備の購入、新たな事業の立ち上げなど、企業が将来の収益向上や事業拡大を目指して行う長期的な投資を指します。これらの投資は、企業の将来を見据えたものであるため一時的な経費ではなく、減価償却として数年にわたって回収されます。そのため、Capexは企業の成長や競争力を支える重要な要素となります。

この記事では、Capexの基本概念からCapexを決める際に考慮したい点、企業分析のポイントなどを解説します。

Capexの利用例一覧

Capexは、主に企業の成長や維持のために投じられる長期的な投資です。一般的な例としては、工場や機械の購入、建物の修繕、新製品の研究開発費用、ITシステムの導入やアップグレードなどが挙げられます。

例えば、自動車メーカーであれば、新型車の開発費や新工場の建設費や機械設備の更新費用がCapexとなります。また、IT企業であれば、新規サービスの開発費やサーバー設備の更新・増設費用がCapexに該当します。

以下に具体的なCapexの例を表にまとめてみました。

セクター Capexの例
製造業 新工場の建設、機械設備の更新
IT業界 サーバー設備の増設、新規サービスの開発
不動産業 物件の耐震補強、新規物件の建設
医療業界 最新医療機器の導入、施設の改善・拡充

これらは全て企業が今後の成長や競争力強化を目指した投資であり、企業の将来性を見極める際に重要な指標となります。

Capexが企業に与える影響

Capexは直接的に企業の成長に関与する支出です。新たな設備投資や技術革新はCapexに該当するため、生産性や収益性が向上する可能性があります。また、競合他社との差別化を図るための設備改善や新規事業への投資もCapexとしてカウントされます。

しかし、Capexはその投資額が大きいため、企業の財務状況に大きな影響を及ぼすことがあります。考えられる影響は、以下の2点です。

  1. Capexが高いと、短期的なキャッシュフローを悪化させる可能性がある。
  2. 長期的には、新たな設備投資や技術投資が収益を上げ、キャッシュフローを改善する可能性がある。

Capexの影響は一概に良いものばかりとは言えません。適切な投資額と効果を評価して、バランス良く運用することが企業にとって重要となります。

Capexと似ている言葉「Opex」とは?

Opex(オペックス:運営支出)とは、企業が日常的に発生させる経費のことを指します。例えば人件費や賃借料、広告費、設備の保守費用などです。事業を運営するために継続的に必要となる運営費(ランニングコスト)がOpexに該当します。

以下にOpexの一部を表にまとめました。

Opexの支出は大きな投資ではなく、企業活動の維持に必要な経費であるため、「“運営”支出」と呼ばれます。

CapexとOpexの違いとは

言葉としては似ているCapexとOpexですが、それぞれが適用される分野は大きく異なります。Capexは主に新製品の研究開発や設備投資、大規模なリニューアルなど、企業の成長を支える長期的な投資に用いられます。Capexは企業の将来的な利益増大に直結するため、高いCapexは企業の成長性を示す一方で、適切なリターンが見込まれないと、業績に悪影響を及ぼす可能性もあります。

一方、Opexは日々のビジネス運営に必要な経費で、人件費や広告費などが含まれます。これらは直接的な収益を生むとは限らないため、その規模は業績と強く比例しているのが特徴です。Opexが大きい企業は安定的ですが、一方で過大な経費は利益を圧迫するため、経営効率の観点から適切なバランスが求められます。

Capexへの投資活用を行う前に考慮すべきポイント

Capexへの投資は金額も莫大になりがちなため、あらゆる観点から慎重に判断することが大切です。ここでは、Capexを行う前に考えておきたい判断軸を10個を紹介します。

1. 事業戦略との整合性

任意の投資が企業の長期的な目標やミッションに合っていないと、その資源は無駄になり、結果的に企業全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、投資が企業の長期的なビジョンと戦略に合致しているかどうかを確認することが大切です。5年計画や10年計画などがあれば参照し、検討しているCapexが計画から外れないものか、慎重に判断することが必要です。

2. ROI(投資対効果)の評価

ROIは「投資に対して、どのくらいのリターンが出るか」という指標です。ROIが低い場合、その投資は会社にとってコストばかりかかるものとなり、成功どころか会社利益を毀損してしまう可能性もあります。Capexの額と将来の収益予測を行い、ROIの値や「どのくらいで投資を回収できそうか」を確認することが大切です。ROIが一定の基準以上であれば、投資は正当的なものであるといえます。

3. 競合分析

競合他社が同様の投資を行っているのか、また成功しているか&失敗しているかを競合分析で知ることで、自社の戦略を調整しやすくなります。事前に市場調査を行い、競合企業の成功事例や失敗事例を研究しましょう。同じような投資を行っている競合企業がいるなら、結果や効果を分析するとよいでしょう。

4. キャッシュフローの影響

一般的にCapexは短期的に大きな金額が動くため、キャッシュフローに影響を与える可能性があります。そのため、会社の運営に影響を与える可能性を考慮しなくてはなりません。 投資によって生じるキャッシュフローの変動を考慮し、企業の財務健全性にどれだけ影響を与えるかを可視化することが大切です。

5. リスク評価

すべての投資にはリスクが伴い、Capexもその1つです。リスクとは投資した資金が回収できないリスクや、市場の不安定さ、技術不足などがあります。起こり得るリスクを洗い出し、事前に対策を考えておくことが重要です。

6. タイミング

Capexの投資を行うタイミングも考慮しておくとよいでしょう。例えば経済状況や市場の需要が不安定な時に大きな投資をすると、潜在的なリスクが高まる傾向にあります。投資のタイミングを決める時は経済状況や季節性、市場の需要など、市場調査と経済指標を参考にすることで、投資リスクを減らすことができます。

7. 資金調達

もし資金調達が必要である場合は 自己資本や銀行融資、ベンチャーキャピタルなど、多様な資金調達方法を検討する必要があります。

8. 実施計画とスケジュール

どれだけ良い投資計画でも、それを実行する計画が不明確であれば、成功の確率は低くなってしまいます。 行動計画を作るためにも実施手順、期間のほかに責任者などを明確にして実施計画を作成する必要があります。

9. KPI(重要業績評価指標)の設定

投資の成果を具体的に測定するためには、KPIの設定が必要です。例えばROIや生産性、売上成長率など、Capexの投資パフォーマンスをモニタリングする為にもKPIを設定しておくことが大切です。指標を投資の成功を測定するためのKPIを設定します。

10. 継続的なモニタリング

投資後のパフォーマンスは継続的に監視し、必要な調整を行います。投資後の状況を継続的に監視しておくと必要な調整を素早く行うことができるため、定期的にKPIと実際のデータを比較し、投資計画の修正や調整を行いましょう。

企業分析におけるCapexの見方

それでは、企業(財務)分析の観点から、Capexの扱い方を見ていきましょう。

企業の財務報告書でのCapexの見方

資本支出(Capex)は財務報告書の「投資活動に関するキャッシュ・フロー」の項目で確認できます。Capexに該当する箇所は「有形固定資産の取得」「無形固定資産の取得」「投資有価証券の取得」などです。

Capexの増減から読み取ることができる企業の状況

Capexは企業の成長性や将来性を示す貴重な指標です。Capexの増加は、企業が資本財の導入や設備投資を行っていることを示し、これは企業が新製品の開発や市場拡大を目指している可能性があると読み取ることができます。

一方、Capexの減少は、企業が設備投資を控えていることを示しています。これはコスト削減の一環か、あるいは市場環境の変化に対応するための戦略的な判断である可能性があります。

したがって、Capexの動向を確認しておくことは、企業の戦略や方向性を理解する手助けになります。ただし、単純にCapexの増減だけを見るのではなく、それが企業全体のパフォーマンスや戦略にどのように影響を与えているかを評価することが重要です。

まとめ

Capexは企業が新たな機器や設備を購入し、新製品を開発したり市場拡大を図ったりするための投資を表しています。このような投資が増加している企業は積極的にビジネスを拡大している可能性が高いと考えられます。

一方で、Capexが過度に増加している場合は、適切な収益を生み出せずに資本が浪費されるリスクがあるため、注意が必要です。また、一時的な大型投資等によりCapexが急増する可能性もありますので、一定期間のデータを比較し、トレンドを把握することが重要です。

また、新たな事業機会への投資が少ない、つまりCapexが減少している場合は、企業の成長性が落ち込んでいる可能性があります。しかし、これも一概には言えません。例えば効率化によるコスト削減が進んでいる場合は、Capexが減少していても企業の競争力が強まっている可能性があるからです。

Capexの単純な増減だけでなく「それが何を意味しているのか」を理解し、他の財務データと合わせて分析することで、企業の健全性や成長性をより深く理解することが大切です。

経営管理クラウド「Loglass」は、アナログ運用の多い、経営管理領域のデータを一元化。予算策定、予実管理、見込更新、管理会計のフローを効率的に仕組み化し柔軟に”次の一手”を打ち出せる機動力を届けます。

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執筆者
Loglass編集部

ログラスの編集部です。ビジネス戦略、リーダーシップ、財務、イノベーションなど、ビジネスに関する面白い話題をお届けします。 最新トレンドをキャッチし、ビジネスのヒントやアイデアを提供して、成功への一歩をサポートします。

Opexの例 内容
人件費 従業員の給与や福利厚生費など
賃借料 オフィスや店舗の家賃
広告費 商品やサービスの宣伝活動にかかる費用
設備保守費 機器や設備の修理・メンテナンス費用