予実管理とは、予定(予算)と実績を比較し、その差異を管理することをいいます。予実管理が適切におこなえると組織の目標達成に向けた進捗を把握でき、また必要な場合には修正を行うための手段となるため、ビジネスの運営においてとても大切なプロセスです。
本記事では、予実管理をおこなう際の具体的な手順やツールの選び方、分析軸など、予実管理の基本を解説します。
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予実管理は、企業の経営改善につながる重要な手法です。予実管理の具体的な手順を紹介します。
予実管理の最初のステップは予算策定です。企業の事業目標に基づいて、部署・チーム単位で予算を作成し、目標を決めていきます。大切なのは「目標として妥当な数字設定であるか」をしっかり確認していくことです。
では、目標が適切であるかを判断するためにはどうしたらよいのでしょうか。以下のような観点から目標を立てるのがおすすめです。
適切な目標設定を行うためには、過去の数字を適切に把握しておくことも大切です。
次に決められた予算と比較し、実績を集計します。予算と実績の差がなぜ生じたのか、その原因分析を行います。分析をするためには、KPIを設定して、自社の強み・弱みを認識する必要があります。強みと弱みを認識するためには、SWOT分析などのフレームワークも活用してみましょう。
自社の強み・弱みがわかったら、それを反映させて次期の対策を行います。重要なのは、売上に貢献している部分(=強み)を、さらに伸ばす戦略を立てることです。弱い部分については、その問題点・課題に対応し、改善していきます。
予実管理ツールにはさまざまなものが存在します。最も一般的なツールがExcelやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフトです。自由度が高く費用も大きくかからないため、大手から中小企業まで、多くの企業が使用しています。
一方、表計算ソフトは数字で管理することが基本であるため、グラフなど感覚的な分析を行うことが難しい……という問題があります。またデータ量が多いと表示が重くなってしまったり、ファイル数が多くなってしまい管理が難しくなることも。
ほかの予実管理ツールを使うことで予実の差異を視覚的に理解できるようになるほか、データが一元管理されるため管理工数を大幅に減らすことができます。
それでは、どのような観点でツールを選定すればいいのでしょうか。
UI/UXが良いなど、直感的で使いやすいツールを選ぶとよいでしょう。使用感が良いと作業をおこなうメンバーのストレスが減るうえ、ツールを導入する際も早めに定着させることができます。
必要な機能が全て揃っているか確認することが重要です。予算策定、実績の収集、分析と評価など、予実管理に必要な機能が含まれているかを確認しましょう。
例えば、分析に必要な切り口がいくつ登録できるのか、ダッシュボードは扱いやすいか、ファイルのインポート機能はついているのか……などで判断することができます。
ツールの導入は一般的に「イニシャル(導入)コスト」と「ランニング(運用)コスト」がかかります。自社の特性に合致したツールは人的コストを削減できることが多いものの、一定のコストがかかることに変わりはありません。
どの程度ツールに投資できるのか、またツールによってどの程度ほかのコストが削減できるのか……を考える必要があります。
問題が発生したときに迅速かつ適切なサポートが受けられるかどうかも重要なポイントです。特にクラウドサービスの場合はアップデートが入るたび、使用感が変わることもあります。また、システムの導入時にはさまざまな疑問点が生まれることがあります。
そんなとき、システムや業務のことをよく理解している担当者からのサポートがあると、ストレス無くツールを活用できるようになります。担当者とのコミュニケーションが取りやすいかどうかも視野に入れて選びましょう。
提供形態には「クラウドベース」「オンプレミス(自社運用)」などがあります。クラウドベースなら場所を問わずアクセスでき、メンテナンスが容易です。一方、オンプレミスのツールは、データのセキュリティとプライバシーをより細かく制御できます。
では実際に、予実管理をおこなう際の大きな流れを見ていきましょう。
予算(目標)を設定します。企業の事業目標に基づいて、部署・チーム単位で予算を作成し、目標を決めていきましょう。とはいえ、部署間でのコミュニケーション不足や目標設定の基準の不明確さから、予算の目標設定が困難になることがあります。
予算目標を適切におこなうには全社的な目標を明確にし、それらに基づいた予算目標を各部署で設定できるようにすることが大切です。目標設定の基準を全社で共有することで、一貫性のある目標を設定できます。
予算を設定したら、具体的な数値目標を立てていきます。
例えば利益目標が決まっている場合なら減価償却費・人件費など、使える経費を算出し、費用に関する予算も決めていくことができます。しかし、予想外の経費増や市場環境の変化などにより、予算が適切でなくなることも出てくるかもしれません。
予算策定では「自社がどのような状態にあるのか」など、現状の解像度を高く持ったうえで可能な限り詳細な予測ができると、予想外の経費増を最小限に抑えることが可能です。また市場環境の変化に対応するためには、定期的な予算見直しを行いましょう。
部署・チーム単位で決めた費用・予算を、企業全体の予算と合わせて「矛盾が出ていないか」再確認します。とはいえ部署間での予算の調整が難しい場合や、全体の予算と部署の予算が一致しない場合もあります。そんな時は優先順位を付けてみたり、予算のカットを検討することが必要かもしれません。また部署間で対話を試みたり、新たに資金調達をするという手もあります。
予実管理でデータを分析する際、予算と実績の差異(バリアンス)を見ていきます。
「なぜ予算と実績に差異が生まれたのか」その原因を特定し、またそれが一時的なものなのか、それとも継続的な問題が発生しているのかも考えていきます。分析結果をもとに経営戦略の修正や予算の再設定、業績改善を行っていきます。
ここからはどのような観点から分析していけばよいのかという、基本的な指標を紹介します。
売上高は企業の収益性を示す基本的な指標です。期間ごとの売上高を追跡することで、ビジネスのパフォーマンスを評価し、予算目標を設定します。ただし、売上高だけを見ていると利益率やコスト構造など、他の重要な要素を見落とす可能性があります。売上高だけではなく利益率や各種のコストも同時に追跡し、ビジネスの健全性を広い観点から評価していきましょう。
コストには直接コスト(原材料費や労働費など)と間接コスト(管理費や販売費など)があります。コストが適切に管理できていないと利益率が低下し、ビジネスの持続可能性に影響を及ぼす可能性があります。コストを定期的に見直し、無駄を削減し、効率化を図りましょう。
利益率は「売上高に対する利益の割合」であり、企業がどれだけ効率的に運営されているかを示す指標です。利益率が高いと健全に企業運営できていると思いがちですが、利益率の高さは必ずしもビジネスが健全であることを示しているわけではなく、高い利益率が維持できていない場合、また投資が適切に行われていない場合は成長の機会を逃していることもあります。利益率を確認する時は、業界の平均利益率や競合他社の利益率も一緒に比較してみましょう。
予実管理を行うときは「予算と実績のデータを正確に把握できているかどうか」に注意しておきましょう。不正確なデータは誤った分析結果をもたらすため、誤った意思決定を引き起こす可能性があります。また、予実管理は定期的にブラッシュアップし、最新の状態にしておくことも戦略立案の効果があります。
予実管理を成功させるには予算と実績を組織全体に周知し、メンバー全員が同じ目標意識を持ったうえで実行に移すことが大切です。ここまでできると、予実管理の効果を最大限に発揮することができます。
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