企業の経営状況や業績・戦略などを明確にし、理解しやすい形で表現することが、現在では企業の成功に不可欠なものとなっています。
この記事では「経営の可視化」の定義や重要性、メリット、具体例など、経営の可視化をどう進めればいいのかを解説します。
企業の経営状況や業績・戦略などを明確にし、理解しやすい形で表現することを「経営の可視化」といいます。例えば財務データ、業績指標(KPI)、業務プロセス、人的資本など……企業のさまざまなデータを可視化することで、経営における次の施策を打てるようになります。
事業環境が複雑化する昨今、特にこうした「経営の可視化」が企業の成功にとって非常に重要だと言われるようになりました。近年は市場の変化が激しいため、現場に多くの裁量を与える企業では、経営層が現場の状況に疎くなってしまいがちです。結果、組織内での目線がそろいづらくなってしまうことも。
全員が同じ目標に向かって努力できる環境を作り出すためにも、経営の透明性を高める「経営の可視化」が重要になってきているのです。
しかし、経営の可視化は単に情報を公開するだけではありません。「その情報が何を意味しているのか」を理解し、それを基にした行動を示すことが重要です。経営の可視化は単なる「情報共有」だけでなく、「その情報をどのように利用するか」という観点も含めて推進していかなければ、意味のあるものになりません。
「経営の可視化」が実現できた場合、多くのメリットがあります。
単なる情報共有にとどまらず「情報の利活用」まで踏まえて可視化できた場合、経営者やマネージャーは、企業の現状を正確に把握し、将来の戦略を立てるための重要な情報を得ることができます。
また、これらの結果として企業全体のパフォーマンスを向上させ、組織の効率性を高めることにもつながるでしょう。
さらに経営の可視化は、従業員のモチベーションを高める効果もあります。従業員が自分の業績や貢献が企業全体にどのように影響しているかを明確に理解できると、より一層の努力や改善を促すことができるからです。
ほかにも、企業の信頼性を高めることにも繋がります。ステークホルダー(株主、顧客、従業員など)は、企業が透明であり、将来性をイメージしやすいことで信頼を高めていくため、これら多様な側面から「経営の可視化」に目を向ける企業が増えています。
経営の可視化は、企業の規模や業種に関わらず、さまざまな方法で実現されています。以下に、具体的な例をいくつか挙げていきましょう。
多くの企業では、経営ダッシュボードを使用して経営状況を可視化しています。ダッシュボードは、財務データ、業績指標(KPI)、プロジェクトの進行状況など、重要な情報を一覧表示するツールです。単に数字を羅列するだけではなく、図やグラフなどを用いることにより、誰もがスムーズに状況を理解できるようになりますし、要約された指標によって覆い隠されていた重要な傾向を見ることを可能に。これにより、経営者やマネージャーは一目で企業のパフォーマンスを把握することができます。
業務プロセスのマッピングは、企業の業務フローを視覚的に表現する方法です。これにより、無駄なステップを特定し、プロセスの効率化を図ることができます。
データ分析ツールを使用して収集したデータを分析し、結果をレポートとして可視化することも一般的です。これにより、経営者はデータに基づいた意思決定を行うことができます。
それでは実際に、どのようなステップを踏んで経営の可視化につなげれば良いのでしょうか。1つずつ確認していきましょう。
まずは「重要業績評価指標(KPI)」を定義していきましょう。これは具体例でご紹介したツールを活用する前に行う必要があります。
KPIとは、戦略目標に対する進捗を測定するための指標のこと。ビジネスによっては、営業、マーケティング、カスタマーサービス、オペレーションなど、分野ごとに異なるKPIを設定する場合もあります。KPIを定義するには、達成したい最も重要な成果は何か、それをどのように定量化できるかを自問する必要があります。例えば、顧客維持率を高めることが目標であれば、解約率やロイヤルティ指数などのKPIを使用することができます。
現場に点在するデータをどう集め、どのように一元管理するのか運用面も含めて検討します。
予算と実績のデータを定期的に収集し、それを整理します。データの整理には、スプレッドシートソフトウェアやデータベースソフトウェアを活用すると効率的です。
KPIが決まったら、ダッシュボードを作成するための理想的なツールやテンプレートを選択する必要があります。ExcelやGoogle スプレッドシートなどの表計算ソフトから、TableauやPower BIなどのオンラインプラットフォーム、さらにはKlipfolioやGeckoboardなどの専用ダッシュボードソフトまで、さまざまな選択肢があります。
データソースの接続やダッシュボードの更新がいかに簡単か、デザインやレイアウトのオプションがいかに柔軟でカスタマイズ可能か、プラットフォームやデータストレージがいかに安全で信頼できるか、複数のユーザーやチームに対してツールがいかにスケーラブルでコラボレーション可能かなどが考慮すべき要素になるため、予算、好み、技術スキルによって最適なツールは異なります。
また、テンプレートを選択するときは目的や利用者に合ったものを選ぶ必要があります。テンプレートとは、あらかじめ用意されたダッシュボードのレイアウトを変更し、データを埋め込むことができるものです。業界に特化したものや一般的なもの、1つのKPIや機能に集中したもの、ビジネスの複数の側面を包括的に概観できるものなどがあります。無料・有料のテンプレートが多数用意されているほか、自分で一から作成することも可能です。
データを効果的に視覚化するには、いくつかの一般原則を考慮する必要があります。例えば、シンプルで一貫性のあるフォーマットと色を使用し、混乱を避け、最も重要な情報を強調し、ラベルや注釈を使ってデータを説明し、データとメッセージに適したグラフの種類を選択することです。例えば、折れ線グラフや棒グラフは時間の経過に伴う傾向を示すために、円グラフやヒストグラムはデータの比較や分布に使用することができます。散布図やバブルチャートは、相関関係や関係性を示すために使用することができます。
最後のステップは、データを明確かつ説得力のある形で提示することです。例えばストーリーや洞察、推奨事項などを伝え、聴衆の注意を引いていきます。メインとなるメッセージと目的を作る際には、聴衆の期待や関心を考慮しておきましょう。
見る人をうまく誘導するためには、タイトル、見出し、キャプション、フィルター、スライダー、ボタンなどのツールをうまく活用することが大切です。ダッシュボードは議論や行動の出発点として使用できるため、上司やクライアントに説明する場合は「結果とKPIがビジネス目標に与える影響」、チームや同僚に説明する場合は「プロセスと日々の仕事の課題と機会」を強調するとよいでしょう。
以上のように、経営の可視化は企業の成長戦略を策定し、実行する上で重要な役割を果たします。企業は現状を正確に把握したうえで、以下のような改善をできると、将来の方向性をよりよいものにすることができます。
経営の可視化ができると、データに基づいた意思決定ができるようになります。これにより、企業はより効果的な戦略を策定し、リスクを管理することができます。
経営の可視化をすると企業全体のパフォーマンスを把握できるため、改善策を打つことができるようになります。これにより、企業は競争力を強化や、さらなる成長を促すことが可能となります。
メンバー全員が同じ目標に向かって努力できる環境を作るためには、経営の可視化が必要です。ビジョンや戦略のロードマップはもちろん、顧客の幸せとは何か、どのように目標達成すればいいのかなどの議論を深めることに繋がります。経営がしっかりモニタリングできていると予測が立てやすく、精緻な計画を立てることができるため、企業はより効果的な意思決定を行い、業績を向上させることができます。
経営の可視化ができると、自社が置かれている状況の解像度があがるため、今後どのように手を打つとよいかが分かるようになります。また、社員の意識向上にもつながります。
市場の変化が激しい昨今だからこそ数字を把握することに時間をかけるのではなく、戦略を立てることに時間を使えると、柔軟な経営戦略を立てられるようになります。
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